第138回検討会概要《女性の更年期障害》
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日 時:2025年6月12日(木)19:00-20:30
場 所:オンライン討議
ミニレクチャー:職域における骨粗鬆症研究
発表者:伊東 葵(事務局)
抄 録:筋・骨格系疾患は主要な長期病休の原因であり、骨の健康維持は健康管理上の重要課題である。昨年、日立健康管理センタにおける骨密度検査受検者を対象に、骨の健康に関する調査を実施した。本調査の質問紙調査で得られた骨の健康に関わる背景因子(過去1年間の転倒歴、脆弱骨折歴、初経・閉経年齢など)について、結果の概要を報告した。また、骨の健康維持に不可欠な血中ビタミンD濃度の分布やビタミンD欠乏の関連要因についても併せて紹介した。
研究動向:女性の更年期障害
発表者:長濱 さつ絵 先生(長濱産業医事務所合同会社)
抄 録:職域における女性の更年期障害への理解と対応をテーマに、最近の動向や治療の考え方を紹介した。更年期障害は、ほてりや発汗に加え、関節痛、抑うつ、不眠、集中力低下など多様な症状を引き起こし、プレゼンティーイズムによる労働能力の低下や離職の一因となる。厚労省や経産省のデータからも、更年期による就労への影響や経済損失の大きさが示されているが、受診率や治療率は依然として低い状況である。ホルモン補充療法(HRT)は乳がん発症や血栓症のリスクが過大視されがちだが、近年の研究でそのリスクは大きくないことが分かっており、適切な診断と個別対応によって生活の質が大きく改善するケースもある。産業医としての関わり方や、相談を受けた際の基本的な知識や視点について、実例を交えて解説した。
総合討論:女性向け健診項目導入の現状と課題
ファシリテーター:本多 融 先生(株式会社日立製作所)
抄 録:日立健康管理センタにおける女性向け検診項目導入の実態を紹介し、その現状と課題について討議を行った。当センタでは、乳がん・子宮頸がんといった女性特有のがん検診に加え、更年期以降に多い骨粗鬆症の予防を目的とした骨密度検査を行っている。女性向け健診を導入する際には、プライバシーには一層の配慮を要することや、専門性の高いスタッフや特殊な器具・設備を自前で対応するか外部委託するかの判断を迫られる。乳がん検診は、若年の受診者が多いことや侵襲性が低く設備導入がしやすいことを踏まえ超音波検査を採用した。当センタが所在する茨城県北部には婦人科の医療機関が少なく、子宮頸がん検診を行う医師の確保に苦慮した。 討議では、超音波検査による乳がん検診は有効性に関するエビデンスが限定的であることや過剰診断が懸念されるとの指摘があった。子宮頸がん検診については、コスト面を重視してプレパラート法(従来法)を用いる検診機関が依然多いものの、より精度の高い液状化細胞診法(LBC法)の実施を確認してはどうかとの意見が挙がった。精密検査を行える医療機関との連携が必要であるため、女性向け検診の導入にあたっては周辺の医療事情を考慮する必要があるとの意見が出された。