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第140回検討会概要《ビジネススクールで学べること/産業衛生の専門性を磨く公衆衛生の学び》

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開催概要

日 時:2025年11月13日(木)19:00-20:30
場 所:オンライン討議

発表1:ビジネススクール(MBA)で学べること

担 当:今井 鉄平 先生(OHサポート株式会社)
抄 録:演者は2018年からの2年間、青山学院大学大学院・国際マネジメント研究科・MBAプログラム(イブニングコース)で学んだ。同大学院に進学する前に米国の公衆衛生大学院で学び、その中で強く動機づけられた社会課題(中小企業向けの産業保健リソース拡大)の解決に向けて、演者はOHサポート株式会社を設立した。事業を拡大するために、ビジネスを体系的に学び、規模拡大に耐えうるビジネスモデルをつくりたいという想いから、ビジネススクール(MBA)を目指すこととなった。MBAを目指すこととなった動機、大学院への出願の実際、MBAで学べること、MBAでの学びの産業医実務における活用などについて紹介した。

発表2:産業衛生の専門性を磨く公衆衛生の学び ― 博士課程での経験から

担 当:川島 恵美 先生(株式会社Keep Health)
抄 録:産業衛生の専門性を深めるため、公衆衛生学の体系的な学びを通じて実務を見直した経験を報告した。最初の就職先でデータを活用した産業保健に携わる中、数字の裏にある意味を読み取り、より根拠をもって語る力の重要性を感じた。現場の課題を科学的に検証し、施策につなげる力を養うため、滋賀医科大学NCD疫学リーダーコースに進学した。入学当初はコロナ禍という制約下での学びだったが、英語の授業や留学生との交流を通じて国際的な視野と実証的な考え方を育んだ。コホート研究の継続には多くの人の支えがあることを知り、SASによる解析や論文作法なども身につけることができた。NIPPON DATA90を用いた研究では、ヘモグロビン値の低値・高値いずれも将来の心血管疾患死亡リスクに関連する可能性を示した。修了後は大学での研究と企業での産業医活動を両立し、実務と研究を行き来する中で、公衆衛生の学びが産業医としての視野と実践の幅を広げた経験を紹介した。

総合討論

今回の発表では、産業医が実務の中から課題を見出し、経営学や公衆衛生学など他分野の知を取り入れながら現場への実装につなげていく姿勢が共通して示された。今井先生からは、グローバルな産業保健体制の構築と中小企業支援に挑む中で、MBAの学びが戦略的思考やビジネスモデルの構築にどのように寄与したかが共有された。MBAでの学びを通じて「今後も挑戦を続けたい」という強い意志が生まれ、それが産業医活動の原動力となっている点が示された。川島先生からは、疫学・統計の壁を乗り越え、産業衛生を科学的に検証する博士課程での経験と、データによって現場を変える力の重要性が報告された。総合討論では、目的をもって学ぶことの意義、国際的にみた公衆衛生と産業衛生の関係、日本の好事例を世界へ発信する重要性などが議論された。産業保健の発展には、実務と学術、国内と国際を往復しながら課題解決に挑む姿勢が不可欠であることを改めて確認された。