第144回検討会概要《AYA世代のがん患者のキャリア支援》
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日 時:2026年6月11日(木)19:00-20:30
場 所:オンライン討議
特別講演:AYA世代のがん患者のキャリア支援
担 当:清水 千佳子 先生(国立健康危機管理研究機構)
抄 録:国のがん対策では15~39歳をAYA世代と定義している。AYA世代は、心身の成長が著しく、アイデンティティの確立に向けた葛藤を抱えるライフステージにある一方で、キャリアの視点では、自身の夢の実現や社会経済的自立に向けて歩み始める「キャリア形成期」に位置づけられる。この時期にがんに罹患することは、単なる学業や就労の中断にとどまらず、将来設計そのものの見直しを迫られる“実存的な危機”となり得る。また、がん治療に伴う短期的な体力低下や長期的な健康リスクは、就労やキャリア形成に直接影響するだけでなく、時間的・経済的負担ともなる。こうした背景から、医療機関でもキャリア支援の必要性が認識されつつあり、がん相談支援センターや多職種チームが“手探りで”取り組みを始めている。しかし、体系的な支援として確立しているとは言い難く、医療と学校・企業におけるキャリア支援の接点はまだ発展途上にある。本講演では、AYA世代に差し掛かった小児がん経験者を含むAYA世代のがん経験者に対し、医療機関で現在行われているAYA世代支援の実際と、その中で模索されているキャリア支援の試みを紹介する。さらに、企業の人事担当者や産業医等、医療機関の外の支援者と、キャリア支援においてどのように協働し得るのかを考えたい。
活動報告:再発がん患者のピアサポート~社会的処方として~
発表者:大津 真弓 先生(合同会社ひまわり)
抄 録:演者が理事として活動している一般社団法人CSR(Cancer Survivors Recruiting)プロジェクトでは、「がん患者の就労」を考えるプロジェクトを実践している。その活動の一環として、働くがん経験者を対象としたオンラインのサバイバーシップラウンジを毎月開催してきた。同理事の1人が逝去したことを契機にその遺志を継ぎ、再発・転移・進行がんの患者を対象とした「サバイバーシップ・ラウンジ・プラス」を2022年6月より開始した。演者もファシリテーターとして継続的に参加している。本活動への参加を通じて、この活動が社会的処方となっている事に気が付いた。産業医実務において、再発・転移・進行がん患者と面談する際、これまで傾聴しか出来なかったが、本ラウンジプラスを紹介するという新たな支援の選択肢を持てるようになった。本発表では、ラウンジプラスの参加者がどのような事をお互いに話して生活の糧にされているのか、事例を交えて紹介する。
総合討論
ファシリテーター:戸津崎 貴文 先生(PwC Japan 合同会社)
概 要:事業場における仕事と治療の両立支援に対する整備が進み、柔軟な対応が取られるようにはなってきたものの、壮年期のがんとAYA世代のがん(既往を含む)を分けた社内精度を整備することは難しい。事業場におけるピアサポートでは、自主的な活動は別にして、事業場が主導する場合は活動時間の業務上の取り扱いや個人情報の取り扱いなど、慎重に検討すべき点がある。そうした課題はあるものの、AYA世代のがん患者は、罹患以後のキャリアも長く、不安や負担を抱え込んでいることも多い。本人が望むキャリア形成を実現するためには、相談やサポートの体制についての情報を提供し、社会的処方を行っていくことが求められており、産業保健が担える役割もあろう。医療機関では、治療中は患者と頻繁に接点を持てるが、フォローアップ期間に移行すると定期受診時しか接点がなく、その間の状況把握や対応は難しい。また、主治医が就業に関する意見書を作成する際、事業場での対応の可否が不明な状況では、事業場への情報提供に不安を感じることがあることも否めない。治療者と事業場側での両立支援の「間(はざま)」で悩んでいるAYA世代のがん患者がいることを念頭に、治療とキャリア形成の「間」にある課題を明らかにするとともに、そうした症例に接する治療者と産業医を支援する体制の構築も望まれる。